東京圏生活

生活と仕事に関すること

電通「鬼十則」という劇薬

労働環境の劣悪さが問題となっている電通ですが、この電通には「鬼十則」という、一般の人から見たらドン引きの、極めてパンチの強い行動規範があります。

取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……

これは、電通鬼十則」の一節です。

まあ、アクの強い文章が並ぶ十則ですが、おそらくこの一文が一番過激なんじゃないかと思います。

……これが冗談ではなくなってしまっているから問題なんですね。

しかしながら、自分はこの電通鬼十則」に初めて出会ったとき、実のところそれほどネガティブな印象は受けませんでした。

電通鬼十則」は悪なのか?

一見すると、よく訓練された社畜を作りあげるためのスパルタ的な訓示のように見える鬼十則ですが、使い方さえ間違えなければ、これは仕事で成果を出すにあたって非常に強力な意識付けになると思うのです。

一応、全文引用します。

1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

全体的な発想としては、末端の人間に対して指示通りに死ぬほど働け、と言っている話ではなく、むしろ仕事を主導する立場の人間に対する戒めとしての意味合いが強いように思います。

ですので、会社を率いて経営をやりたい人とか、超どでかい仕事を成し遂げたい人などには訴求力が高いのではないかと思います。……むしろ、これくらいの気概を持っていないと、シビアなビジネスの世界では頭角を表すことは難しいのでは。

耳ざわりの良い成功哲学ばかりが書いてある自己啓発本ばかり読むより、この鬼十則を暗唱でもした方がよほどタメになるのではないでしょうか。

じゃあ、電通鬼十則」に従って仕事をすればいいの?

とはいえ、それはないでしょう。

こんなの、イチ会社員に過ぎない自分を含めた大多数の大人にとっては過剰な内容です。それに、そもそもの出処が広告代理店、煽りと誇張がバリバリの表現になっているのですから、馬鹿正直に文言通りに受け取るべきものではありません。

あくまで、使いたい人だけが自己責任で使うべき劇薬です。ちょっと毒が強すぎると思えば、自分なりにマイルドに咀嚼して利用しても良いわけですし。

 

まあ、こういう規範を文化として、他人に過酷な労働を強要するのは悪であるとは言っていいと思います。

仕事なんかのために死にたくないですもんね。

 

電通「鬼十則」 (PHP文庫)

電通「鬼十則」 (PHP文庫)